「80歳。いよいよこれから私の人生」を読みました。昨年80歳を迎えた多良久美子さんが、暮らしを綴ったエッセイです。
多良さんはご自身とご家族のことを「80代の老夫婦と障がい者の息子という、危なっかしい家族」と紹介されています。最重度の知的障がいを持つ息子さんは現在55歳。平日は施設に入所し、週末は帰宅するとのこと。どう考えても大変そうです。けれども、「80代の今、不安がなく毎日楽しいのです」と語る多良さん。どうしてそのように思えるのか?不安だらけの毎日が、50年かけて徐々に変わっていった、という多良さんの半生がもっと知りたいと思いました。
私は現在40代。3人いる子どものうち、末子に知的障がいがあることがしばらく前に分かりました。5歳になった息子は未だ言葉を話さず、放っておけばあの世にまっしぐらな行動。生かすだけで必死の毎日です。とはいえ息子のことはとても可愛く、見ているだけで面白くて(大変だけど!)、障害については比較的すんなり受け入れることができました。ですが、未だにどうしても受け入れられず、ふとした瞬間にずしんと暗い気持ちになってしまうことがあります。それは、私がいなくなった後の息子の人生を考えたとき。「親亡き後」の心配はずっと抱えてこれから生きていくのだと思いますが、それでも私が老後を穏やかに過ごすためにはどうすればよいのか…。そんなことをぐるぐる考えていたときに、この本と出合いました。
多良さんの暮らしを読み進めるうちに、少しずつ心がほぐれていくのを感じました。たとえば、障がいを持つ息子さんとの暮らしを振りかえり、「外出が大変だったから家のなかでの楽しみを見つけた」と話す多良さんの言葉には「そうそう!」と世代を超えて共感を覚えました。私も家のなかでできるブログや読書が趣味。そしてまだまだたくさんの楽しみが見つけられそうだと何歩も先を行く多良さんの背中を見て思いました。書籍で紹介されている料理も簡単で美味しそう。「節分の甘い豆(p.99)」や「玉ねぎ麹のドレッシング(p.122)」はぜひ作りたいです。
また、「知識」を持つことで漠然とした不安が薄れるのだと、再確認できました。息子さんのこともあり福祉の勉強を始めた多良さんは、80歳目前まで福祉関係の仕事を続けられました。この経験と知識が、「親亡き後」の心配を和らげてくれたのだと思います。多良さんの「今までの経験や勉強がエネルギーになり、乗り越えられることができた」との言葉が力強く響きました。私自身も昨年大学に編入し、まったく畑違いの「福祉」について勉強をスタートしました。多良さんのように、今も、40年先も暮らしが楽しめるように、知識を身につけていきたいです。
障害を持つ子の子育ては孤独です。インターネットやSNSが発達した今、以前よりずっと簡単に同じような立場の方や、一歩先ゆく方の体験談にアクセスできるようになりましたが、私が本当に知りたかったのは、シニア世代の体験談でした。先行き不安な今、このようなシニア世代のライフスタイル本がよく読まれている理由も頷けます。今回「80歳。いよいよこれから私の人生」が読めてとてもよかったです。これからの暮らしに漠然とした不安を感じている方にこそ読んで欲しい1冊だと思いました。
知的障害の息子との今後(親80代・子50代)を想像して沈んでいたとき「80歳。いよいよこれから私の人生」を読んだ。基本的にはシニア世代の暮らし本だけど障害児(者)との生活も親目線で書かれいる。ネットだとこの世代の体験談はなかなか見つからないので、書籍で読めてよかった。少し浮上できた。 pic.twitter.com/bF5kd8DanK
— ヨリ (@yori_mi_chi) February 14, 2024
▽ ご紹介した本はこちら。
コメント
ご紹介ありがとうございます!私編集担当の水沼と申します。ワーキングマザーのブログもやっています。
久美子さんご本人にもご紹介しますね。とても喜ばれると思います。
こちらこそ素敵な本を世の中に出していただきありがとうございます。久美子さんにも感想を届けてくれるとのこと、とてもうれしいです。ブログも拝見しました。自然史博物館、初めて知りました!私も子どもと行ってみたいです。