『大学教授、発達障害の子を育てる』岡島裕史

大学教授、発達障害の子を育てる』を読みました。情報学部教授・岡島裕史さんの著書。その名の通り、発達障害の息子さんの子育てについて書かれた本で、かなりおもしろかったです。たとえば、著者がお子さんの発達障害に気づく場面では、

ぼくの子は双子だ。親が教員、子どもが双子、そのうち1人が障害持ちというのは、ある学生の卒業論文によればミステリで真っ先に殺されるか、もしくは真犯人である確率が非常に高いポジションである。

──『大学教授、発達障害の子を育てる』p60引用

子どもの発達障害が分かったときのヘビーな話なのに、こんなふうに書かれたらつい笑ってしまう(すみません!)。ただ、「かなりおもしろかった」と書いたのは、この本を通して発達障害(のなかの「自閉スペクトラム」)について多くの気づきがあったためです。

そのなかの1つが、自閉スペクトラムの子のコミュニケーションについて。発達障害の子は、周囲とは違う考え方やものの捉え方をするので、コミュニケーションが嚙み合わないことがあります。これは、私自身も発達障害の方との会話で感じていました。会話の一例で『サザエさん』の一コマが登場するのですが、

身近にありそうな例で行こう。『サザエさん』(姉妹社版)に出てくるやつ。
「おなべを見ておいて」
「わかった」
一見、スムーズな会話である。しかし、鍋は吹くのである。
「見ておいてって言ったじゃん!」
「だから、見ていたよ」
違う! そうじゃない! と全力で言いたいやつである。

──『大学教授、発達障害の子を育てる』p169引用

「おなべ(の火加減)を見ておいて。(そして吹きこぼれる前に火を止めて)」の括弧がまるっと伝わらないのは、プログラミングの指示・命令と同じで、定義しないと伝わらないと表現する著者は、コンピューターの専門家らしいなぁと妙に関心したのはさておき。自閉スペクトラムの子は、「人とは違う経路やメカニズムで情報が入ってきて、そして出ていく」とのこと。「ロジックがないわけではない、違うロジックで動いているだけ」なんです。なるほど。

この本を読み、著者が考える「コミュニケーションとは?」がすごくよいなぁと感じました。コミュニケーションとは、

自分と違う考え方やものの捉え方をする存在があることを認識し、認め、疎通しようと試みること

──『大学教授、発達障害の子を育てる』p171引用

あ・うんの呼吸で察するコミュニケーションはらくちんですが、それに甘んじず、様々な立場の方と意思疎通を試みる努力は続けたいと思います。

私も発達障害の子を育てています。ふつうの赤ちゃんとちょっと違う? と思ったのは生後2ヶ月頃でしたが、診断がついてはっきりしたのは最近です。著者の言葉をお借りすると、子どもが発達障害だと分かったときの気持ちは、

高尾山を登り始めたら、実はそれがK2への道だったと判明したくらいのインパクトがありました。

──『大学教授、発達障害の子を育てる』p4引用

発語がなく、今後成長すると一風変わったコミュニケーションをとるであろう二男のことを、もっと理解したいと思っています。そのためには、症状や症例について学ぶ以外にも、発達障害の子を育てた体験談に興味があります。その点では、『大学教授、発達障害の子を育てる』は手に取ってよかった1冊でした。

もちろん、「発達障害」について全く知識のない方でも、興味深く読み進めることができる本です。よかったらぜひ読んでみてください。とてもおもしろかったので!

▽『大学教授、発達障害の子を育てる』はこちら


大学教授、発達障害の子を育てる (光文社新書)

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