「ザ・パターン・シーカー 自閉症がいかに人類の発明を促したか」サイモン・バロン=コーエン

ザ・パターン・シーカー: 自閉症がいかに人類の発明を促したか」を読みました。著者は、心理学者で自閉症研究者であるサイモン・バロン=コーエン博士です。

「なぜ人間だけが発明できるのか?」

この問いに対し、コーエン博士は本書で新しい理論を紹介します。それは、人間だけが脳に「if-and-then(もしならば)のパターンを探索する」という特殊なエンジンをもち、これが発明を導く本質的な要素であるというもの。

博士はこのエンジンを「システム化メカニズム」と名づけ、「発明者、STEM分野(科学、技術、工学、数学)の人びと、そしていかなるシステムであれ完璧を目指す人びと(ミュージシャン、職人、映画製作者、写真家、スポーツマン、ビジネスマン、弁護士などのマインド)のなかで超高度なレベルに調整されている。(p.23)」と述べます。このような高度にシステム化するマインドを持つ人たち(ハイパーシステマイザー)が人類の発明をけん引していると言うのです。

一方、このような 「ハイパーシステマイザー」の遺伝子は、自閉症の人びとの遺伝子と部分的に一致するとも本書では述べられてます。博士は、「未来の発明家、次なるトーマスエジソンや次なるイーロンマスクを育成したいと思うなら、一般の人々の中にではなく、自閉症の人びとや、ハイパー・システマイザーであるがゆえに多くの自閉症の特性を持つ人々の中にこそ、そうした人たちを見つけられる可能性が高い(p.220)」と示唆しています。

この本は、自閉症の2人の少年、アル(トーマス・エジソン)とジョナのエピソードから始まります。社会性に困難を抱える一方で、 パターンやシステムを探求する彼らの子ども時代に、彼らは大人になってどんなすごいことを成し遂げるのだろう…と一気に引き込まれました。ですが、発明家として成功するアルとは対照的に、ジョナは大人になっても職を得ることができず人生に絶望します。 「彼らを取り巻く環境次第で、抜きん出る力を発揮したり、もがき苦しんだりするかもしれないのだ(p.220)」と語る博士の言葉が深く刺さりました。

では、自閉症の人びとに「抜きんで出る力を発揮」してもらうためには、企業や社会はどうしたらよいでしょうか。本書の最終章「未来の発明家を育てる」に多くの事例とともにその解決策が書かれています。出来ることならこの章だけでも多くの方に読んでもらいたいと思うほど、個人的にはグッとくる内容でした。一部引用します。

新世代のハイパーシステマイザーのなかにも、未来の偉大な発明家たちが潜んでいるだろう。彼らの斬新なアイデアは、私たちのサポートがあってこそ、イノベーションとなりうる。(p.242)

自閉症の未来を照らすような本書を読み、私自身は、これから彼らをどのようにサポートをしていくか、そのヒントを得たような気がしました。

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