「温かいテクノロジー」林要

「温かいテクノロジー」を読みました。表紙のかわいいロボット(LOVOT)の開発ストーリーについて書かれた本です。ショッピングモールの体験イベントで目にしたLOVOTの、とぼけた表情に心を掴まれて、「どんなロボットなんだろう」と興味本位で読み始めましたが、ページをめくるたびに開発者の林要さんの「LOVOT誕生までの思索の旅」にぐいぐい引き込まれていきました。最先端のテクノロジーを掘り下げるだけでなく、社会、心理、そして人類の進化まで様々な学問分野に話題が広がり、とても面白かったです。

「ロボットを開発することは、「人間」を知ることでした」と語る林さん。序章は次のようなエピソードから始まります。林さんはPepper(ソフトバンクの人型ロボット)を開発していた頃、とある高齢者福祉施設で言われた一言にとても驚かされました。それは、「(ロボットの)手を温かくしてほしい」というもの。これまでロボットの改善点といえば利便性(「ビールを持ってきてほしい」のような)にまつわることが多かっただけに、この言葉はまったく予想していなかったと振り返ります。そして、「ロボットは、そもそも利便性の向上に貢献しなければ存在してはいけないものなのか(p.61)」との問いに辿り着きます。人類を幸せにするロボットの可能性を考えたのち、生まれたのが「LOVOT」でした。

私が「人類を幸せにするロボット」で真っ先に思いつくのは、やはり「ドラえもん」です。子どもを育てるなかで何度も「ドラえもん!はやく誰か開発して!!」と何度思ったことか。それは、ドラえもんの四次元ポケットから出てくる道具が目当てというより、一緒に遊ぶ友達や、ときどきケンカする兄弟のようなロボットが子どものそばに居てくれたらいいなと思うからです。そのため、この本を読んで一番ワクワクしたのは、林さんの「最終的に、ぼくはLOVOTを進化させて、ドラえもんにつながる技術を開発したいのです(p.295)」という言葉でした。

7章ではまるまる「ドラえもんの造り方」について林さんのイメージを共有してくれています。夢のような話にも思えますが、林さんは次のように説明します。「ドラえもんを造るのが、 たとえとても難しくても、そのプロセスを細かく、テトリスや数独を解くのと同じレベルに分解できれば、みんながその問題を自主的に解き出します。それをビジョンを示す 人のもとに 持ち寄り、組み立て、新たに見つかる問題をまた細分化し、解き、組み立てる。 これを続けると、いつか ドラえもんが誕生します。(p.313)」。そして、ドラえもん誕生までの道のりを「AIが人類に近づくための6つのステップ」に分解、解説します。すべての章がまんべんなく面白かったですが、とくにこの7章は「ロボットを開発することは、人間を知ること」だと、深く実感できてよかったです。

以前こちらのブログで書きましたが、知的障害をもつ子の親として、私は「未来」に対する不安が強いです。社会福祉は今後どうなるのか、は関心事のひとつです。今回、「温かいテクノロジー」を読んだことで、未来に対する不安が希望へと少し傾きました。私も、エンジニアの端くれとして、「テクノロジー」は未来をより良いものにしてくれるのだと信じて、日々仕事に取り組んでいます。これからは「温かいテクノロジー」の分野でも自分にできることはないか、じっくり考えてみたいと思います。ロボットと共存する未来が、今からとても楽しみです。

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