「新版 障害者の経済学」中島 隆信

新版 障害者の経済学」を読みました。次の書き出しで始まる本です。

私が障害者について最初に本を書こうと思ったのは1995年のことである。86年に生まれた長男に脳性麻痺による身体障害と知的発達の遅れがあり、その子どもと共に2年間のアメリカ留学生活を終えて帰国した直後だった。

──p.3

障害者の親の立場で社会問題を綴った本と思いきや全然違いました。経済学者でもある著者は、「さまざまな施設を見学したり、制度を調べたりしていくなかで、障害者とその周囲の環境を客観的に分析している自分に気がついた(p4)」とのこと。

「新版 障害者の経済学」は、著者が障害者の親という立場ではなく、経済学者として一歩離れたところから障害者の世界を眺めた内容です。冷静な語り口ながらも、障害者を通して社会全体がよくなるためには? が熱く書かれた経済学の本でした。たとえば、日本の”働き方改革”の方向性については、こんなふうに書かれています。

日本のこれまでの”働き方”は、企業にとって人事コストを最小化する目的で設定されてきたと考えられる。すなわち、オールラウンドプレイヤーを新卒で採用し、さまざまな仕事を経験させながら企業にとって都合のいい人材を選び育てていくというやり方である。そして、そうした働き方についていけない人は脱落していく。

──p.215

脱落するなかには、高齢になり思うように働けなくなる人や子育てや介護で長時間働けない人の他にも、不得意な仕事ばかりを押し付けられて心を病む人もいるでしょう。私自身、とても身近な問題だと感じています。この現状に対し、著者は「障害者雇用」から学ぶことは多いと言います。

障害者は健常者と違い、できないことをあたかもできるかのように誤魔化したりすることができない。そのため、雇う方が障害者の特性に合わせていくしかないのだ。
(中略)
障害者を真の意味で戦力として活用できさえすれば、一般の社員を戦力にするのはたやすいことである。比較優位の原則に従った適材適所の働き方が実現できれば、働く人の幸福も上がり、生産性も向上する。

──p.216

最後に、障害者などの”社会的弱者”と共生するには、私たちの社会が経済的、精神的な余裕が必要だと説く著者の言葉に深く共感します。
「障害者の経済学」は、私たちが生きやすい未来のヒントを与えてくれる本だと感じました。


新版 障害者の経済学

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